副業・兼業に対する残業代の支払い方
政府は、2017年3月に策定した「働き方改革実行計画」で副業・兼業を推進する方針を示しました。
働き方改革が目指す「柔軟な働き方」の施策の一つです。
従来は副業・兼業を認めていない企業が多く、ある調査では副業・兼業を認めていない企業が85%にのぼっています。
副業・兼業を認めることによる過重労働や情報漏洩など、業務への影響が懸念されるためです。
厚労省はモデル就業規則を副業・兼業を認める内容に改定し、企業が副業・兼業を認めることを後押ししています。
では、副業・兼業に関する労働時間や残業代のルールはどうなっているのでしょう。
労働基準法では、「労働時間は、事業場を異にする場合において、・・・通算する。」とされていて、 通算した結果、法定労働時間を超えた場合は割増賃金の支払いが必要になります。
例えば、A社で正社員として8時間勤務した後、B社でアルバイトをする場合、 B社の労働は時間外労働となり、B社は割増賃金を支払うことになります。
しかし実際には、他社でどのくらい労働したかを把握したうえで、時間外労働の時間数を算定し、割増賃金を支払うのは困難であり、実務的にはほとんど行われていないと思われます。
こうした実態に即していない法律上のルールが存在していることも、
副業・兼業を企業が認めることを難しくしている一因だと思います。
厚労省では、「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を設置し、検討を行いました。
検討会の報告書の中で割増賃金については、
・会社ごとに労働時間を算定して、それぞれ法定労働時間を超えた場合を対象とする
・(実労働時間ではなく)所定労働時間のみ通算して時間外労働を算定する
などの見直し案が示されました。
最近、副業・兼業を認める企業が少しずつ増えているのを実感しています。
過重労働にならないよう健康面の課題も配慮しながら、運用に耐えられる副業・兼業に関する労働時間管理の法整備を早急に進めてもらいたいと思います。